世の中はみんなつながっているんだなあ、と思うことがあります。「風が吹けば桶屋が儲かる」のアメリカ版「株価が落ちたら犬が遊びに来る」の我が家のワンワン物語りを今回はお披露目です。
犬の名前はマックス。一歳になろうとするお茶目な男の子。ギャブン(弟)家族のファミリードッグです。
マックスとの出会いからご紹介しましょう。前回に紹介しました、家族のボートハウスがある沼地デルタの近所を、半年ほど前のこと、ギャブンが車で走っていると、子犬が一匹で道端をとぼとぼと歩いていました。そこで、なんとなく車を停めて降りる、この彼の心の温かさが物語の始まりです。
周りは川と草むらだけ。「首輪のついた子犬がどうして1匹で歩いているんだ?」そうして、子犬を拾い上げボートハウスへ連れ帰り、近所の家を訪ね、「誰かこの犬を知りませんか?」と飼い主を探し歩くこと数日。
失業率が10%を越える不景気で、飼い犬を置き去りにして他の町へ出て行く家もあると聞きますが、結局、飼い主の見つからなかった子犬は、ギャブン家のメンバーとなり、マックスと名前をもらい、サンフランシスコへ来たのです。
半年が経ち、マックスは元気に成長し、弟家族が旅行で留守中の今月、とうとううちにお泊りに来ました。自分の寝床クッションを持って。
ツタツタと爪音を立てて家中を歩き、洗濯籠を持って階段を登り降りする私を「なにしているの?」という顔でじっと見つめ、洗濯機のそばに一緒に座り、まるで我が息子が小さかった頃のよう。
散歩の担当はパパ・ショーンと息子・ジョン。パパ・ショーンが連れて出ると、パパいわく「マックスは胸を張って堂々と歩き、ドッグパークに走らせに行っても、名前を呼ぶと飛んで戻って来て颯爽としていた」とか。

しかし、息子・ジョンと散歩に出ると、なぜだか、出くわす犬皆にほえまくって困ったそうな。「相手は鏡」という言葉がある通り、「犬も鏡」でしょうか?
息子ジョンが近所のベトナムヌードルのお店の前にマックスをつないで一人中で食べようと入ると、マックスは気も狂わんばかりにワンワン泣いた。「どこいくの?おいていかないで!」と言っているようだったので、たまりかねてあきらめ、隣りのサンドイッチ屋さんで急いでサンドイッチを買った。それでもマックスは外でヒンヒン泣いていたとか。ひとりにするな、と言って泣きたくなるのは僕とそっくりだ、とジョンは思ったそうな。
マックスと散歩するために放課後は飛んで帰り、マックスを家で一人ぼっちにしないために一緒に留守番をし、マックスは宿題をする息子の足元にすわり、夜は一緒に寝て…。

マックスが首を傾けジーっと見つめ返してくる顔は我が子のようにかわいい、と思っていると、家の外を歩く他所の犬に吠え立てる声はおっさんのように図太く…。
なんとも楽しいマックスとの生活が日常化し始めたある朝、面白いことが起こりました。起きて間もないショーンと私は、おはようの挨拶がすんだばかりで、なぜか会話がケンカごしの音調に傾き始め、、、。たまたまそこに居合わせたマックス。しばらくじっと見つめていた後、すたすたとジョンの部屋へ歩き去っていったのです。
その後姿を見送っていると、これぞまさしく「夫婦ゲンカは犬も食わぬ」だ!と、私は感動してしまったのでした。マックスの背中に「あほくさ」とつぶやかれ、ほんとうに、あほくさいと思った朝でした。
家の掃き掃除をするとゴミがマックスの毛と一緒になりモコモコ膨れ、洗濯物にはマックスの毛も混じり、マックスをうちの子のように思い始めた頃、弟家族の旅行が終わり、マックスを家に送り届ける日になりました。

車に乗っているマックスが自分の家の近所の風景に気がついてきた時の、目に輝きが灯り始めた、あの表情。家に帰る喜びを今マックスは感じているんだなあ、と思いながらマックスをじっと見つめました。
マックスを送り届け、私達は家に帰り、なんとも寂しい、元通りの家なのに寂しい、ツタツタと歩いて来てこちらを見上げ、「なにしてるの?」と見つめるマックスが、今もそこにいるよう。 すでに次、遊びに来る日が待ち遠しいです。


